漫画編集長「漫画の定額制配信サービスは無理。単行本が売れなくなり作り手側が死んでしまう」
講談社のマンガ6誌読み放題アプリは、出版界の危機感から生まれた 「船が沈もうとしているのに…」
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/28/comic-days_a_23372877/
ユーザーにとって究極に便利なサービスとは、「すべて無料」で楽しめるものです。
ただ、それが成立してしまうと作り手側が死んでしまう。そして作り手側が死んでしまうと、長い目で見たら作品が生まれなくなり、ユーザーにとっても不利になる。
だからお互いがちゃんと対称性を取れている状態を維持しなくてはいけない。
ユーザーにとって不便ではなく、気持ちよく楽しめる。一方で作り手側もしっかりお金を稼いで、継続的な活動ができる。
この両方のバランスを取ることができれば良いと思っています。
音楽業界はApple MusicやSpotifyなど、先にサブスクリプションサービス(定額制サービス)の波がきたということもあって、そのバランスが業界全体で取れつつあります。
あと、そもそも音楽と映画には、デジタルで得られる体験より上位の体験があるんですよね。
上位の体験とは?
音楽だとライブに行くこと、映画だと映画館で観ることです。デジタルでは代替できないものですね。
例えば、音楽を無料に近い状態で多くの人に聴かれたとしても、その中でファンになってくれた人がライブに来たりファンクラブに入ったりしてくれる。
そこで対価が支払われて、アーティストにしっかり還元されるという形ができています。
映画もそうです。映画館に行くということは、Netflixでは代替できない経験で、映画館にも3Dや4DXみたいなプラスアルファの価値が付いてきている。
音楽、映画、どちらも上位の価値というものが担保されていて、そこでしっかりクリエイターへの利益還元ができる。
一方で漫画の場合は、「紙で読む」ことが一つの上位体験としてありますが、映画と音楽に比べると少し弱いんですよね。
だから、破格の定額制サービスで全ての出版社の漫画が読めるようになってしまうと、対称性が取れないんです。
対称性が取れないと事業を持続できないので、音楽や映画とはまた違ったモデルが成立しないといけない。
けれどその形がまだ見えていなくて、バランスが取れずガタガタしている。漫画を描く側も、読む側も、出版社側である僕らも、みんながそれに対して不満を持っているのだと思います。