富野由悠季「『シン・ゴジラ』は100点中60点。ゴジラの出来が悪い」
■富野由悠季監督、『シン・ゴジラ』を語る
ただ、最初は普通に80点をあげられる映画だと思ったんですが、観終わったあとにネットをあまり見ない僕にも色々な情報が入ってきて、20点ぐらい点数が下がりました。自衛隊も閣議も、用語や組織などが全て現実に近く、庵野監督の想像で出来上がっているものではないと知って、多少ガッカリしたからです。
キャスティングは見事でした。他の実写映画の監督は、これを見倣って欲しいと思いましたね。
また、キャスティングだけでなく、人物の撮影も良かったです。女性防衛大臣(余貴美子)のアップがバンと出てくる瞬間、「おおっ!」と思うでしょ?さらに、人物のアップがどんどん増えていく。
ああいうシーンでカメラを引いてしまうと嘘臭く見えるんだけど、そこが良く分かっているのには驚きました。
ただ難点を言えば、脇役に比べて主演(長谷川博己)の造形が弱い。竹野内豊と並ぶと、どうしても目がそっちにいってしまう。
主役は主役って顔をしてくれないと困るんですよね。でも、もっと基本的なところで不満があるんです。
ゴジラがずーっと、どの形態の時にも瞬きをさせてないでしょ?
特に第二形態なんかは、瞬きをしないことで、出来の悪いぬいぐるみにしか見えないんです。
アニメでは、キャラクターを生きているって思わせるために「目パチ」を意識的にやらせるのに、なぜアニメ出身の監督がゴジラにやらせないんだ!
機械的な技術と思われがちだけど、それは違います。
たとえばお姉さんが振り返った時に、人はまず目を見る。オッパイを見るのはそのあと!
目に表情がなければ魅力も感じないし、潤んでいなければ生きているとも思えません。
この映画は、全体的に水気が足りないのです。
時代を客観的に写しているドキュメンタリーではあるけれど、艶っぽさがなくてもいいというのは理屈です。
石原さとみをキャスティングするなら、彼女の特徴をなぜ活かさない!?
小型機での密談が終わったシーンで、飛行機から石原さとみが降りてきて、普段通りの駐機場を俯瞰して、それから唇をなめるカットを入れれば、羽田は潰されていないという説明にもなるし、石原さとみの魅力も生きる。