【正論】ロシア人声優「ミリオタがソ連カッコイイとか言ってるの聞くとイラっとする」
2021.12.25
ソ連は娯楽少なく…声優ジェーニャ「アニメは二つ。チェブラーシカとヌー・パガジー」
インタビューに応じる声優のジェーニャさん=2021年12月、関根和弘撮影
――逆にソ連のよかった面というのはあったのでしょうか。
ソ連にもいい面はあった。まず教育。大学も無料だったし、国語や科学、スポーツなど、色んな分野で教育がしっかりしていたと思う。病院も無料。治安もよかった。映画や芸術も、心を込めて作られたものが多かった気がする。
あと元々考えられていた国の仕組みや理念とかは悪くはなかったと思う。とにかく正義とかフェアとか、そういうのをすごく大事にしていた。でも、問題はそれを実行するのが不可能ってこと。なぜなら、国や社会を作っているのは人間だから。
私もソ連は嫌だったけど、実は感謝している面もある。来日して最初の10年は生活するのに本当に大変で、銀行口座に千円しかないこともあった。でもソ連時代のつらく、不自由な経験があったからこそ、今日まで頑張れたんだと思う。ハングリー精神というのかな。私も記憶を改ざんしちゃっているのかも(笑)。
――一部の日本人、特に若い世代には、ソ連に対するあこがれと言いますか、肯定的にとらえる人もいます。ミリタリー好きの人たちとか。どう思いますか。
どこかちょっとイラッとするよ。彼らにしてみれば、映画でも見ている感覚で、こんな世界があったら楽しいねとか、ちょっとおもしろがる感じなんでしょうけど、でもそれちょっといやですね。こっちはその世界を実際に生きてきたわけですから。
ご飯が足りない、物が足りない、情報が制限されている。そういう現実を生きてきたんですよね。
彼らは「国歌がいいよね」「軍服が格好いいよね」とか言うんですけど、それはそうなんですよ。だって、国の威信に関わる部分だから。ソ連はプロパガンダに力を入れていたの。
「ソ連はロマンだ」と言って、そういう楽しみ方も、ソ連の記憶が風化しないという意味でもありなのかもしれない。でも、一方で、ソ連で暮らしいていた人たちがどれだけ苦労したか、もっと深い闇がある。それも分かって欲しいですね。