大学教授「何故少年キャラの声優は女性が演じるのか、考察しました」
JASTトレンド2021年01月16日12時00分/石田美紀新潟大学経済科学部教授
https://www.j-cast.com/trend/2021/01/16403050.html?p=all
日本の漫画やアニメについての文化論は多いが、声優まで含めたものはまだ少ないようだ。2020年12月末に刊行された『アニメと声優のメディア史――なぜ女性が少年を演じるのか』(青弓社)は、サブカルチャーに詳しい石田美紀(みのり)・新潟大学経済科学部教授(専攻は視聴覚文化論)が、声優にまで射程を伸ばした斬新な論考だ。
『アニメと声優のメディア史――なぜ女性が少年を演じるのか』
◆性も年齢も超える
野沢雅子、小原乃梨子、田中真弓、緒方恵美、高山みなみ......。アニメの少年を女性の声優が演じるのは、日本アニメの特徴だという。こうした配役はどのようにして生まれ、アニメ文化に何をもたらしてきたのだろうか――というのが本書のテーマだ。
少年を演じる女性声優を軸にアニメと声優の歴史をたどり、日本が独自に育んできたアニメと声の文化を描き出す。子役起用が難しいという制約から始まった少年役に女性声優をあてる配役は、魔法少女もの、アイドルアニメ、萌えアニメ、BLなどのアニメの変遷とともに多様な広がりを見せてきた。性も年齢も超え、恋愛対象としての「イケボ」の青年まで演じる女性声優は、外見とキャラクターとの差異やジェンダーのズレから、視聴者に独特の欲望を喚起してきたという。
序章?少年役を演じる女性声優――リミテッド・アニメーションと声
◆第1部少年役を演じる女性声優の歴史
第1章連続放送劇と民主化
第2章子どもを演じること――木下喜久子と『鐘の鳴る丘』
第3章他者との同期――一九五〇年代テレビ黎明期における声の拡張
第4章アニメのアフレコにおける声優の演技
第5章東映動画という例外――一九五〇年代末から六〇年代の子役の起用
◆第2部ファンとの交流と少年役を演じる女性声優
第6章アニメ雑誌とスター化する声優――一九七〇年代の変化
第7章声優とキャラクターの同一視――一九八〇年代の新人声優たち
第8章 「萌え」と「声のデータベース」――一九九〇年代におけるキャラクターの声
第9章 「萌え」の時代に少年を演じること
第10章受け継がれていく「ずれ」と「萌え」――キャラクターに仮託された理想
補論アニメ関連領域から再考する少年役を演じる女性声優